実存分析の本質

 

ヴィクトール・フランクル博士が提唱した実存分析(ロゴセラピー)とは、一体どんな精神療法なのでしょうか?

簡単に理解できるようなものではありませんが、考えるための糸口として、フランクル博士最後の弟子、永田勝太郎先生の言葉を紹介します。


 

「実存分析の本質は、人間の精神における、人間固有の自由性、しかも責任を伴う自由性を行使させ、治療に応用しようというところにある。患者固有の内なる精神の自由性と責任性に自ら目覚めさせ、運命や、宿命に抵抗する自由もあることに気づかせ、そこから、その患者固有の人生の意味を見出させようとするものである。その結果、患者が、「実存的転換 (existential shift; Boothによる、人格的態度の変容) 」に到達することもある。

 

フランクルは、自らも捕虜として体験したアウシュビッツ収容所の極限状況のなかで、たとえ、いかなる極限状況に置かれても、人間には、精神の自由性、態度決定の自由があることを認識した。

 

さらに、そうした精神の自由性に訴えて、人間が、生来有している精神の抵抗性に働きかけ、人間の実存性に根本的な展開を図らしめえることの可能性に気づいた。このようなフランクルの体験は、明日、わが身がガス室に送られるかもしれないという、まさに限界状況における体験であり、そこから誕生した実存分析は、決して、抽象的、思弁的なものではありえず、実践的、臨床的なものである。」

 

(引用文献「実存カウンセリング」永田勝太郎著.  駿河台出版社.  2002年. p.22-23)