
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という概念がどのように登場し、展開してきたのかご存じでしょうか?
QOLという概念について、永田勝太郎先生の著書『こころを癒し からだを癒す 全人的医療の知恵』(1997年)からご紹介します。
QOLとは
「QOLという概念の登場は、従来のキュア(治癒を目指した医療行為)のみを目的とした医学から、キュア&ケア(援助を目指した医療行為)を実践する医療への大展開であり、同時に全人的医療への展開でもある。
患者を人間として正しく理解するために、自然科学的人間観に人文科学・社会科学的視点をも加味した新しい医療モデル、健康モデルを創造することは、時代の要請になったのである。ここに量、質ともに充実した医療が展開されなければならなくなった。
こうした医療における質の患者個々における具体的表現が、QOLの概念である。すなわち、医療職(医師や看護婦など多くの医療関係の専門職)によってなされる行為が、患者という人間の人生にいかに作用するかを評価することがQOLの基本的な概念である。
したがって、クオリティ・オブ・ライブ(QOL)の日本語訳としては、『生命(いのち)の質』と訳すのがふさわしいと考える。ライフには、生命のほかに人生、生活、生き方などの訳もあるが、QOLに求められている内容が、その人間個々の包括的な生き様そのものであることを考えると、この場合のライフは、『生命(いのち)』と訳すのが妥当であろう。この中には、生きることの意味、価値観、生命観、人生観、死生観、世界観までが包括されている。」
引用:『こころを癒し からだを癒す 全人的医療の知恵』永田勝太郎, 海竜社, 1997, p.28-29