
ヴィクトール・フランクル博士が提唱した実存分析(ロゴセラピー)の本質ついて、永田勝太郎先生のご著書『〈死にざま〉の医学』で説明されている箇所を一部抜粋してご紹介します。
(以下引用文)
私たちは、死生観、医療観の基本に実存的視点(実存分析的視点)を置いている。(中略)
フランクルの主張の特徴は、人間は自らの自由意志に基づいた責任のある決断を行い、人生の意味や価値を追求しうる存在、言い換えれば、〈意味〉への意思を発動することのできる存在と見るところにある。〈意味〉は自ら決断することによってのみ満足されるものである。(中略)
実存分析という精神療法は、人間の実存性(ロゴス logos )に訴える療法である。ここにおけるロゴスとは、かけがえのない人間の存在(実存)そのものを意味し、人間だけが有する固有の〈意味〉を、そしてその〈意味〉を認識する人間の高度精神機能を指す。また、「分析」とは人間存在に本来備わっている具体的な意味に焦点をあてて、人間を本質的に理解しようとする意味合いである。
実存分析の本質は、人間の精神におけるその人固有の自由を、しかも責任をともなう自由を行使させ、治療に応用しようというところにある。患者の内なる精神の自由性と責任性に自ら目覚めさせ、運命や宿命に抵抗する自由もあることに気づかせる。そしてそこから、その患者独自の人生の〈意味〉を見出させようとするものである。
引用文献:『〈死にざま〉の医学』永田勝太郎(2006)日本放送出版協会, P.156-159