
永田先生の著作から、今回は、慢性疼痛の治療の原則について抜粋してご紹介します。
(以下引用)
慢性の痛みの治療の原則
慢性の痛みは複雑な機能的病態であるため、治療も一筋縄ではいかない。個別的である。しかし、その原則は、以下の通りである。
第1ステップ:今、ここで患者を苦しめている痛みからの速やかな解放
まず、たとえ、一時的でもよいから痛みのない状態を経験させる。この体験により、患者さんは自らの痛みを医師が理解してくれたことを体感する。ここでは、急性疼痛に用いる方法がよく用いられる。神経ブロック療法、鎮痛消炎剤、抗うつ剤、漢方方剤、また鍼灸などである。
第2ステップ:患者の痛みの全人的理解
患者が痛むのはなぜか、なぜ、慢性化してしまったのか、痛みの背後に控えている生きざま(身体・心理・社会・実存的状況)に関した問題は何か、資源は何か。医師と患者の相互主体的な関係のなかで、問題と資源を相互に理解し合う。
(中略)
第3ステップ:痛みのセルフコントロール
患者さんが自らの問題と資源を知り、自らセルフコントロールし、痛みを予防してゆく。
第1ステップは主に、パソジェネシス的方法、第2ステップは、サルトジェネシス的方法、第3ステップはセルフコントロールによる。
引用文献:永田勝太郎. 痛み治療の人間学. 朝日新聞出版社. 2009. p.52-53