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「バリント療法 全人的医療入門」永田勝太郎(編)

 「バリント療法 - 全人的医療入門」

医歯薬出版. 1990

監修 池見酉次郎

編集 永田 勝太郎

 

今から35年前の本書を読むことで歴史的な理解が深まり、全人的医療やバリント療法の本質を学ぶことができるでしょう。


バリントはハンガリーに生まれ、内科医としてスタートし、後に精神科医、精神分析医に転じ、ロンドンで実地医家(GP)として開業しながらロンドン大学の講師を勤めていた人である。彼は、一般開業医を訪れる患者たちについて、彼らの訴える症状の背後にある心理・社会的な因子への理解を深める、いわゆるバリント方式の面接法 (medical interview) を発展させた。

 

このバリントの面接法がいわゆるカウンセリングと異なるところは、それが単に心理面(もしくは心理社会面)だけから患者にアプローチするのではなく、患者の身体面・心理面・社会面・生命倫理(実存)面全体を抱括する全人へと展開された面接法となることにより患者の病態が、全人的に、すべての面について分析され、そして包括され、しかもそれが治療者と患者の双方に理解される点にある。

 

(中略)

 

このような治療者の開かれた態度を、バリントは”医者という薬” (doctor as a medicine) といい、米国の臨床心理学者ワトキンス (Watkins) は治療的自我 (therapeutic self) と呼んだ。医学教育学上は態度 (attitude) といえよう

 

(本書の永田先生の文章より)


 

【目次】

監修の序

 

第1章 全人的医療とは

1. 健康について

2. 心身医学と全人的医療

3. プライマリ・ケアとバリント法

 

第2章 我が国のバリント療法

1. バリントとの出会い

2. バリント法のポイント

3. バリント法の日本的展開 

 

第3章 バリント方式の面接法のアウトライン

1. 診断

2. 心理的療法

3. 一般的なルール

4. バリント・グループのリーダーの役割

 

第4章 バリント法と他の心理療法との併用

1. はじめに

2. 行動療法

3. 精神分析

4. 実存的心理療法

5. 失感情症、失体感症、失意味症

6. ヘルス・アート

 

第5章 21世紀に向けての全人的医療の展開

1. はじめに

2. 全人的医療とは

3. 全人的医療、プライマリ・ケア、家庭医学

4. なぜ、いま全人的医療か

5. バリント方式と全人的医療

6. 東洋医学と全人的医療

7. おわりに

 

第6章 歯科医師にとってのバリント方式

1. 歯科におけるバリント療法の対象病態

2. バリント方式と歯科医療

3. バリント方式の診療の実際

4. おわりに

 

第7章 看護婦にとってのバリント方式―ターミナルケアを通して―

1. 末期患者への看護の役割

2. 事例紹介ー患者の訴え方ー

3. バリント方式のグループ・ワークの利点

 

 

第8章 養護教諭にとってのバリント方式―思春期バリントグループ―

1. はじめに

2. 思春期の心身の特徴

3. 保健室での全人的対応の3ステップ

4. バリントグループ・ワークの成果

5. PEGによる生徒理解の実際

6. バリントグループ・ワークから得たものと今後の課題

7. おわりに

 

第9章 全人的医療に望むもの

1. 医師は患者の幸せを第一に

2. 患者の側も気づきと努力を

 

第10章 バリント・グループ・ワークの実際

1. グループの構成

2. グループ・ワークの運営

3. グループ・ワークのセッティング

4. グループ・ワークの進行

 

第11章 バリント方式の医療教育への応用ー態度教育と治療的自我ー

1. はじめに

2. 医学教育と医療教育

3. 態度 (attitude) とは

4. 態度と治療的自我、薬としての医師

5. 態度教育の効果

6. おわりに

 

第12章 医学生とバリント方式―事例紹介―

1. “全人的医療を考える会”と私

2. バリント式体験学習から得たもの

3. ダメ学生を目覚めさせた臨床実習

 

第13章 全人的医療の展開―PEGの臨床応用―

1. はじめに

2. 人間学的実存的アプローチによるPEGの試み

 

 

第14章 全人的医療の実際―日常臨床への応用―

1. 高血圧に伴う起立性低血圧とそううつ状態

2. 円形脱毛症

3. 気管支喘息

4. 頭痛と不登校

5. 慢性顔面痛

6. テクノストレス 

7. 起立失調症候群

 

第15章 不定愁訴のケアと全人的医療

1. はじめに

2. 不定愁訴の定義・特徴

3. 不定愁訴症候群の全人的医療

4. 冷え

5. おわりに

 

第16章 陰部慢性疼痛(心因性疼痛)の全人的医療

1. はじめに

2. 陰部慢性疼痛の定義と特徴

3. 対象

4. 方法

5. 結果

6. 考察

7. まとめ

 

第17章 過敏性腸症候群の全人的医療

1. はじめに

2. 定義・疾病概念・病型分類・頻度・診断

3. IBSの発祥のメカニズムと全人的医療

4. IBSの全人的治療

5. IBSの東洋医学的治療

6. おわりに

 

第18章 慢性疼痛患者の全人的医療

1. はじめに

2. 慢性疼痛とは

3. 慢性疼痛を困難な問題にしてしまっているもの

4. 慢性疼痛への全人的医療

5. おわりに

 

第19章 ターミナル・ケア

1. ターミナル・ケアと全人的医療

2. 死生観・・・治療者の死生観

3. 末期の意味するもの

4. 臨死患者をケアするための“8つの知恵”

5. 疼痛のコントロール

6. ターミナル・ケアの実践ー看護の視点からー

 

付/バリントの想い出

1. 全人的開業医学のパイオニア

2. バリントとの出会い

3. 薬としての医師

 

あとがき


2025年10月から、国際実存療法士の新カリキュラム、eラーニングが始まりました。

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