医学博士の永田勝太郎医師の「音楽療法の生理学的研究と心身医学における応用」(『音楽療法研究-第一線からの報告-』音楽之友社、1996)をご紹介します。
永田先生は音楽の生理学的影響(血行動態、呼吸数、心電図、体温等への影響)の研究について報告されています。
その研究結果を踏まえて「セルフ・コントロール・ミュージック・シリーズ」を開発をしたプロセスも克明に綴っています。
これだけポピュラーになり、生活に密着した芸術である音楽は、人間のからだとこころにいったいどんな影響を与えているのであろうか。特に人間の生理面への影響は重要な問題である。
また、さらに一歩進めて、音楽をうまく治療に使えないだろうか。
私たちの音楽の心身医学的研究はこうした素朴な疑問より始まった。
(中略)
私たちは医療資源の一つとして、しかもアメニティ(心地好さ)を伴った治療方法として音楽療法を開拓して行く必要がある。多くの治療方法の中でアメニティを伴うものはほとんどない。むしろ多くが苦痛を伴うものである。
(中略)
私たちはこれだけ豊富な音楽資源をもっと積極的に医療に活かす方法はないものかと考え、この十数年間、おもに心身医学的方法、自律神経学的方法を取り入れ、その基礎的研究、ならびに臨床応用を試みてきた。
本稿では、そうした私たちの試みについて報告し、今後の展望について述べてみたい。
(永田勝太郎先生「はじめに」より)
『音楽療法研究-第一線からの報告-』
音楽之友社、1996
【目次】
はじめに (楼林仁)
第1章 音楽療法とは (楼林仁)
第2章 音楽の治療的機能 (林庸二)
第3章 方法と評価 (松井紀和)
第4章 音楽療法の生理学的研究と心身医学における応用 (永田勝太郎)
1. はじめに
2. 音楽の生理学的影響の研究の歴史的成果
3. 従来の音楽の生理学的研究の内包する問題点
4. 我々の行なった音楽の生理学的影響の研究
5. 音楽の心身医学への応用
6. 心身医学領域における音楽療法の方法
7. 音楽療法用ソフトウエアの製作
8. おわりに
第5章 1/f ゆらぎと音楽療法 (渡辺茂夫)
第6章 精神病院における音楽療法 (村井靖児)
第7章 発達障害と音楽療法 (松井紀和)
第8章 老人性痴呆症患者の音楽療法 (田中多聞)
第9章 自閉症児とのふれあい (山松質文)
第10 章 心身障害児に対する音楽療法 (遠山文吉)
第11 章 日本の障害児とノードフ・ロビンズのアプローチ (鈴木はるみ)
あとがき (村井靖児)





