永田勝太郎先生は、仏教関係の講座に招かれてお話されることもありました。
今回は、その講義録から一部を抜粋要約してご紹介します。
実はフランクル先生は、自己超越という言葉をよく使いました。
自己超越とは何かと言うと、例えばこういうことがあります。
フランクル先生はロッククライミングが趣味でした。八十三歳まで彼は、アルプスでロッククライミングをやっていた。あるとき、ようやく頂上に着いた。そしたら、谷底の方から、誰かの声が聞こえる。「助けてくれー。助けてくれー。俺の友達が死にそうなんだー。誰かいないかー。医者はいないかー。」フランクル先生は、ようやく上に辿り着いたんですよ。へとへとだったんです。ところが、誰か医者はいないかと言われた瞬間、彼はハッとして起きましてですね、「オーイ、今行くぞー」って言って、また今辿り着いた頂上から、また下に降りて、そして倒れた人を背負って、登って来たんだそうです。そしてそこへ丁度、救急隊が来た。その救助隊にその背負った人間を渡したまま、先生はそこでバタッと自分が倒れちゃった。四十八時間動けなかった。これが自己超越です。
人間が、自分の職務、自分の責任感や意味という、職務に目覚めている時に、人間は、信じられない火事場の馬鹿力を出すんですよね。それだけのパワーを、私達一人ひとりが皆持っている。
参考文献:永田勝太郎. 『死をのり超えて生きる』
(仏教講座講義録「心のめざめ(16)」. 長野市南長野仏教会. 2010)
