「体をなおす、心を診る 現場の心身医学」
永田勝太郎 著
毎日新聞社 , 1988年
たくさんのエピソードが載っているので、1980年代後半の日本の社会情勢を垣間見ることもできる大変興味深い一冊です。
【目次】
イントロダクションー心身医学とはなにか
第一章 からだと心の複雑な関係
人気歌手の自殺と四歳児のおなかの関係ーー空気嚥下症
息子をなくした社長の沈潜した悲しみーー仮面うつ病
式場から消えた花嫁に何が起こったかーーアイデンティティー・クライシス
いわゆる「よい子」に異常が起こるときーー登校拒否
息子の自立と母親の激しく揺れる心理ーーアトピー性皮膚炎
思春期の乙女心にショックだった「太った」の一言ーー拒食症
順風満帆の事業家の他人には言えない悩みーー隠部の疼痛
四十年も続いた嫁姑、水面下の戦いーー不安定高血圧
十歳の少女の「らしく」願望ーー脱毛症
ハリキリ海外駐在員の心の空白ーー燃えつき症候群
癌恐怖症に陥った主婦の不安ーー起立性低血圧
わがままゆえに生活のリズムが狂った主婦ーー不安定高血圧
「昏迷」から「たれ流し」に至った元重役ーー退行現象
頑固バァちゃんの求めていた救いーー気管支喘息
プライド高きビジネスエリートの秘密ーー性的無知
エレクトーン奏者の愛と孤独ーー交通事故の痛み
コンピューター人間の落とし穴ーー生体リズムのくずれ
受験の精神的緊張に耐えられなかった中学生ーー過敏性腸症候群
農業一筋のジイちゃんが勝った!ーー前立腺癌の痛み
自分を抑えすぎた二代目店主の無理ーー胃癌の痛み
ガンバリ屋だった元看護婦の怒りーー膵臓癌の苦しさ
第二章 心身医学の治療はここが違う
音楽は人間の正常化機能を助けるーー音楽療法①
個別性の医学の時代がきたーー音楽療法②
全身の痛みを消してしまったサウンドドライブーー音楽療法③
糖尿病を治す気になった“おんな小錦”さんーー生き甲斐をとり入れた治療
下剤を日に300錠も飲んでいたピアニストーー絶食療法
むなしく命をおとしたキャリアウーマンーー中途半端な心理療法の危険
六十二歳の社長を苦しめた頑固な腹痛ーー絶食療法の逆効果
野心家商社マンの薬中毒ーーお日さま的治療
関節痛からやけくそになった剣道の達人ーー時間軸をとりいれた治療
冷え性で人生を窮屈にしていた中年女性ーー行動科学的手法
屋根から転落して植物状態になったけれどもーー「昏迷」からの脱却
味覚を失った老女の寂しさーー中西合作の治療
父親の死の悲しみを抑えていた中学生ーー悲嘆療法
悪循環を呼ぶ慢性の疼痛ーー痛みを理解する治療
ヒステリー患者の「自己愛」ーー医療における失敗
夫の転勤が呼んだ不安と痛みーー正常値と異常値
第三章 ライフ・スタイルと心身医学
コマーシャル医学とセルフ・コントロール医学
伝統医療に注がれる国際的な熱情
十二指腸潰瘍を作っていたセールスマンのモーレツ生活
肝硬変を応援していたバーのマダムの無茶な生活
若王子信行さんのストレス・サバイバル
社長さん達の突然死と「間」のある生活
「冠状動脈性格」は突然死の危険がいっぱい
ストレス潰瘍をのりきった若い主婦
高齢者にはタブーの急激な環境変化
初老期うつ病を克服した老母
「桜」のように惜しまれて迎える死
エピローグ 全人的医療への船出
