バリントグループワークとは

 バリントグループワークとは、患者中心医療を行うための「バリント方式の医療面接法」を習得し、「治療的自我」(therapeutic self)を高めるための教育方法である。

 

 バリント方式の医療面接法とは患者固有の身体・心理・社会・実存的関係を、患者とともに相互主体的に理解できるようにすることである。また、そうしたことができるような、治療者―患者関係を構築することである。

 

 医療の現場においては治療者と患者の関係が治療効果に大きく影響する。すなわち、現場の医療では、治療者の態度(affective domain)が重要であり、そこに態度教育が必要になる。態度とは、治療者の患者に向かう姿勢であり、コミュニケーション能力のことである。

 

 これは医師だけに限らず、治療に携わる医療職全ての者において必要な要件である。そのために医療職は絶えず患者から学び、治療者として成長し続けなくてはいけない。それぞれの職種の特徴を活かしながら、患者と全人的交流をおこなう努力を重ねなくてはならない。

 

 患者はその人固有の生きざまをひきずって、病になる。その結果、診察室を訪れる。患者固有の問題解決のためには、患者と視線を同じにし、患者の生きざまを知るようにしなくてはならない。患者と全人的な交流を行うことにより、患者の心にチューニングインし、良好な関係を構築することができる。

 

 バリントグループワークでは多職種が一堂に会して1つの症例(治療困難な症例)を検討するグル−プワークである。自らの職場でない場所で行うことにも意義がある。自らの職場では「自分の手の内を明かしたくない」「うまくいかなかった症例の提示は治療者のネガティブな評価につながる」など閉鎖的になりやすい。

 

 しかし、失敗から学ばなければ成長には繋がらない。失敗事例にも目を向け、失敗を開示して学び、さらに成長する。これがバリントグループワークにおける効果の一つであるともいえる。

 

(公財)国際全人医療研究所 元代表理事 故 永田勝太郎